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用の美シリーズⅠ 階段

『用の美シリーズ』ということで、使い勝手がよくデザインも美しくプラスαのアイデアも盛り込まれている

という事例を、場所ごとにピックアップして解説していこうと思います。

連載シリーズは、いつも途中で仕事が多忙になり、2~3話書いては終わっていましたが、今回は最低5話まで

がんばろうと思います^^

初回は『階段』

上下階をつなぐための通り道とだけ考えると、なんとも味気ない通路としての機能だけに留まってしまいますが、

そこに色々な要素を加えることで、単なる通り道がハッっとするような空間に生まれ変わったり、その家を象徴

するような場所となったり、デザインの可能性を無限に秘めている場所でもあります。

そんな階段廻りのデザインについて少し語ってみようと思います。

事務所を独立し初めて手掛けたお家につけたL型のリビング階段。

リビングから半階上がったところで90度向きを変え2階へと上がっていくのですが、その踊り場地点に3畳

のスタディスペースをくっつけました。踊り場とはフラットに一続きとなっているため、広い踊り場スペース

に造り付けの大きな机を設置したという感じでしょうか。半階上がっている分、ここの天井高さは必然的に他

よりも低くなり1.9m。通常では考えられない高さかもしれませんが、意外にも勉強をしたり本を読んだりする

にはこの低さがとても心地よく、特別感のあるスペースとなりました。

公園の木々が見えるよう水平ラインを意識した窓を設け、借景を活かせるような工夫も。

そして半階から上の階段下は、高さを活かし大容量の収納スペースとしました。

小さいお子さまがいる家庭では、リビングに何でも隠せる収納があると本当に便利です。

ただ、いかにもここが収納扉ですよというデザインは避けたかったため、扉の枠をすべて無くし壁面

とフラットに納め、扉の存在を極力目立たせないようにしました。パッと見ると全面壁に見えるよう

なデザインとなっています。色を変えた壁面もちょっとしたアクセントとなり空間を引き締める効果

に繋がったように思います。

階段下収納-扉デザインの進化系がこちら。

扉の存在をより一層消したいと考え、階段の段々形状に合わせた特殊な形の扉を作りました。

まさかここが収納になっているとは誰も気づかず、説明すると皆さんビックリされます。

さらにこの階段、玄関扉を開けてすぐ目の前に位置しているため、仕上げ材の選定にも一工夫。

よくある板張りやクロス貼りでは面白くないなぁ~と思い、柿渋染めの和紙を張り渋カッコイイ

仕上げに。和紙端部のヨレヨレとした感じが面白いインパクトのある壁となりました。

玄関を開けると、絵になる階段。手すりも極力目立たないよう薄いスチールで製作しました。

絵になるといえば、こちらの階段も特殊な形状。

  

階段を3つのかたまりに分け、それぞれ異なるデザインで仕上げました。

特にこだわったのは、真ん中部分の箱型階段。和室との繋がりを遮りたくなかったのと、何か印象に残るようなデザインにしたいとが

合わさり、こういったデザインに辿り着きました。

和室側から見るとさらに可愛いい~

そしてこちらは階段上部に天窓を設けたパターン。

階段上部から光が差し込むと想像以上に気持ちがいいもので、上り下りするたびに空が見える!と

お施主様からも好評でした。

最後にこちらは店舗のL型階段。

  

上に行くと何があるのかとワクワクするような雰囲気を演出しようと、先が全部見通せないような造りに。

両サイドを壁で囲み、光の演出で視線を奥に向かわせるような仕掛けを試みました。また、天井はフラットではなくあえて勾配を

つけることで、より奥へと続いていく感じを表現できるのではと思いデザインしました。

階段は、上下階のつながりを決定づける重要なポジションとなるため、色々な事項が絡み合ってきます。特に階段下スペースを有効

利用するとなると、構造的な問題も絡んでくるため複雑化していくことが多いですが、時には大工さんの知恵も拝借し、お客様のご

要望にお応えするべく奮闘しています。