カテゴリー:
芸術の秋 Ⅰ
最近買った本の紹介。
ネーデルランド(現在のオランダ)の画家『ヒエロニムス・ボス』の作品集です。
1450年~1516年に活躍した、風変わりで非常に独創的な画家です。(レオナルド・ダ・ヴィンチとほぼ同時代人)
やはりこの時代は宗教画を描く画家がとても多く、ボスもそのうちの一人でした。
宗教画といえば、マリアの慈愛やキリストの苦難を描き、そこから魂の救済を求め得るような作品が多いのですが、
ボスの世界を見る「目」は明らかに違いました。
人間がもつ本性的な罪悪と世界に対する厭世観を、奇妙奇天烈な怪奇性とともに表現し、皮肉的な視線、人間の
愚かさを高みから冷ややかに見つめる表現など、社会への風刺や批判を痛烈に感じます。
ボスの最高傑作と言われている『快楽の園』↑(下に拡大写真あり)
左から順番に、天国、現世、地獄の光景を描いています。
この絵には数多くの謎が隠されており、見るものに知の限りを尽くした解読を迫る、難解な哲学が織り込まれている
のではないかとまで言われています。
例えば、左下の絵の中央あたりに、オレンジ色のまるい果実の船に人間が乗っている絵があります。
これは、果実の皮が人間の入る「容器」になったことは、果実が食い尽くされたことを意味し、世の終わりを暗示して
いると言われています。また、上部には楕円形の池があり、女性たちのグループが何組か池の中にいます。
池にいる女性のうち立っているのが24人で、これは一日の時間の数を示しています。
そして、その内訳が左から1+4+12+7であることから、それぞれが年、四季、月、週という時間の単位を示して
いるそうです。
地獄のほうの絵中央には、足が木で、胴体が卵、頭の上にお皿を乗せている奇妙な怪物がいます。
この作品集の表紙を飾った人物で、名前は「木男」。
胴体の卵の中は居酒屋になっています。
この怪物は、ボス自身の肖像画ではないかと言う説があり、「ボス」とう名前は「木々、森」を意味します。
それにしても、何世紀も前にこんなシュールな絵画表現を生み出すとはスゴイものです。。
初めてこの作品を目にしたとき、一瞬「ダリ」の世界が頭をよぎりました。