1.素材

素材のよさを最大限にいかせるような家造り。

例えば、柱・梁などの架構を見せるような造りにした場合、集成材を用いることは極力さけ、無垢の木を使いたい。

また、珪藻土塗り風に仕上げているクロスを使うのであれば、本物の珪藻土を塗りたい。

予算の関係上、仕方がないという場合も多々ありますが、できる限り本物の素材を使いたいと思っています。

なぜ、そこまで本物にこだわるのかと云うと…。

私自身、無垢の素材がもつどっしりとした存在感、人を惹きつける圧倒的なパワーに、深く魅了されてしまったから

なのです。ハリボテではない確かなるもの。その差は歴然としています。

やはり長年住む家では、素材の経年変化、つまり美しく古びていくという現象を、一つの楽しみとして生活してもら

いたいのです。建物が完成した瞬間が一番美しいというのではなく、さらに美しく磨きをかけていくための始まりに

過ぎないと思って欲しいのです。

一見すると高級そうに見えるプリント合板や、洒落た柄のビニールクロス。これらの素材が輝いて見えるのは、ほ

んの一瞬でしかありません。時を経るごとに、どんどんその姿を豹変させていき、最後には見るも無残な姿となって

いくのです。近頃は、汚れたらまた新しいものに取り替えればいいという安易な考えのもと、愛着をもって物を大切

にするという精神が、忘れさられているような気がします。形ばかりが先行し、本当の意味での美しさは形骸化され

てきています。

何をもって美しいと云うのか。一度も使われていないピカピカの状態が、本当の美しさなのでしょうか…。

そのような一瞬のうわべだけの美しさを求めるのではなく、正直な無垢の素材に思いを馳せるのもいいのではな

いかと深く深く思います。

正直な素材と云えば、土もまた然り。

単色ではなく、何種類もの色が自然に混ざっているため、奥深くとても表情が豊かな素材なのです。

見ているだけで惹き込まれ、まるで小宇宙を見ているかのようです。

『自然界には宇宙の神秘が存在する』と、何かの本で読んだことがあり、土を見ながらふとこの言葉を思い出し、

妙に納得させられました。

荒いザラザラっとした土壁に、上からサーっと光が差し込んだときの綺麗なこと!本当に放心状態で見入ってしま

います。壁に光が当たっている、ただそれだけのことですが、光ってこんなにも綺麗なんだと改めて感動します。

このような綺麗な光を、朝ふと目が覚めたときに見れると、どれだけ幸せな気分となるか。至福のひとときです。

こう云った感覚は、経験してみないとなかなか実感できないことなのですが、私も5年ほど前に初めて、心地よい

朝の光を体験し、それ以来、光について深く考えるようになりました。

いい建築は、その空間の中で目覚めたときに初めてその良さがわかると云われています。

すべては光に通じます。そう、光、光が重要ポイントなのです。